先聖寺
頭陀袋030 佛のお慈悲
世を救う 三世の仏の心にも似たるは親の情けなりけり。 子供がほめられれば、わたしが褒められたように、子供が成功すれば自分が成功したと、一瞬一時でも子供のことを思うお母さんの気持ちこそ、仏様のお慈悲に近いものはありません。
東日本大震災の被災地、福島県生まれの野口英世博士のことであります。
野口英世博士が子供のころ、母親がちょっと目を離したすきに囲炉裏に落ちやけどをしてしまい指が固まってしまいました。おかあさんは、自分の失敗と思い深く反省して、どうしてもなおしてやりたいとの思いから何軒もの医者を探し、ようやく使える手になりました。 そのお母さんに感謝した英世は医者になって気の毒なひとたちを救おうと医学を志し、アメリカにわたって黄熱病の解明と治療に尽力されたのでした。
忙しい合間に日本に帰国して各地を講演して回っている巡業中、一時もお母さんと離れず一緒でした。大阪、箕面の茶店で休んでいたとき「お母さん。お茶をどうぞ。」「お母さん此処の紅葉はきれいですね」と、お 母さんをいたわる英世の姿に感動した茶店の女主人は野口英世博士の銅像を建てたそうです。
子供はかわいいと思えば思うほど、幸せになってもらいたいと思えば思うほど、子供にお金や地位を作ってあげても、本人の努力が足りなければ、よけい不幸になります。かわいいと思えば思うほど、一番大切な時に代わってあげられない。だから親は陰で涙を流し何とかこの苦難を乗り越えてくれるように祈らずにはいられないというのが 「慈悲」の悲です。
サンスクリットのカルナーで「叩く」「嘆く」という意味を持っている字が「悲」です。親やが子供に乳を与 えている姿は母子、一つになっております。 サンスクリットのマイトラで「親近感」「一体感」の意味持っている字が「慈」です。
アメリカインデアンのうけつがれていることばに
「我々はこの大地を祖先から相続しているのではない。我々の子孫から預かっているのだ。」
というのが残っております。
祖先への感謝の気持ちと未来の人たちの配慮を忘れないで私たちは慈悲の心を温めたいものであります。
(犬山市先聖寺様の御説法より)
住職合掌
実際の頭陀袋はこちらです。
頭陀袋066 雲 無心
「都市に住みビジネスに走り回る人々はつまらないことでいがみ合い怒鳴り合ったりしている。空を仰ぐことを忘れているからだ。
空はいい。雲が形を一瞬一瞬変えながら流れていく。こだわりなど、どこにもない。
雲は無心にして咄を出で、鳥は飛ぶに倦んで還るを知る。(帰去来の言葉)陶淵明は大空を仰いで天地自然のこだわりのない無心の感動を覚えている。
詩人の魂に都市の生活に疲れたじぶんの心を比べると涙が出るほど今の自分のみじめさがわかる。
どうしてこんなに心が乾いてしまったのだろうか。そんなとき一日、空を仰いでみる。乾いた心を溶かしてくれるのがよくわかる。
ご報告
十一月十一日ご本尊聖観世音菩薩慶賛法要,宗祖、隠元禅師追悼並びに檀信徒各家先祖供養が務まりました。
当日は黄檗宗管長、近藤博道猊下,
名古屋真聖寺:木村信安和尚様
岐阜市真聖寺:村瀬正光和尚様。
各務ヶ原清見寺:中野妙照禅尼様
宗猷寺:今城東徹和尚様
恩林寺住職、徒弟:鳳雅禅士が加担くださいました。
恩林寺で管長猊下をお迎えするというのは実に八十年ぶりでありまして大変うれしいことでした。引きつずき猊下の御親教があり、次に犬山市先聖寺住職:芹沢保道老師の、黄檗文化と私たちの生活について、と題し、隠元禅師の生い立ち、禅師がもたらした煎茶、食材、思想などの興味深いお話があり、皆さんで食事をしたのち解散いたしました。
管長猊下は翌日にも御親教を控えておられご多忙の中の御巡錫でした。
住職合掌
実際の頭陀袋はこちらです。